2020.09.23

敏感肌とは?バリア機能との関係と、スキンケアのポイント

ドクターズコラム

#スキンケアのポイント #バリア機能 #敏感肌

いくつかの調査によると、自分を「敏感肌」もしくは「やや敏感肌かも?」と自覚している女性は、特に20代から30代では7割程度、という結果だとか。悩んでいる方の多さに驚きます。 そのように身近な肌悩みである敏感肌なだけに、知りたい情報もさまざまですよね。 「正しいスキンケアの方法が知りたい」「どんなタイプのスキンケアコスメを使うのがいいのかな?」「やはり皮膚科で相談すべき?」「根本的に改善する方法は?」などなど…。 今回は、そんな気になる「敏感肌」について、原因やメカニズム、そしてスキンケアでの対処方法などを分かりやすく解説していきます。


敏感肌とは

使ってみたいコスメが使えない、肌あれや赤みが気になる、など、敏感肌がもたらす憂鬱材料はさまざま。まずは、どんな状態のことなのか、その原因も含めて理解していきましょう。

敏感肌とはどんな状態のこと?

誰もが耳にしたことのある言葉、「敏感肌」ですが、実は皮膚科学的には明確な定義はなされていません。とはいうものの、一般的な定義でいえば「さまざまな刺激に対して、感受性が高まった皮膚の状態」のこと、といえます。

「使う化粧品によっては肌に赤みやかぶれが起きたりピリピリ感を感じる」
「仕事のストレスを感じたり、暴飲暴食をすると、ニキビや肌あれになりやすい」
「髪の毛や服が触れると、肌にチクチクやかゆみが起きる」
といった状態になりやすい肌、ということになります。症状としては、かゆみ、赤み、かぶれ、ピリピリ感、ヒリヒリ感、などがあります。

なぜ、敏感肌になるの?

敏感肌には、生まれつきの体質によるケースと、ライフスタイルや食事の影響などにより自ら症状を招いてしまっているケースの大きく2通りがあります。
主な要因としては、以下のようなものがあげられます。

■乾燥(季節的なもの、エアコンなどの生活環境によるもの、マスク乾燥など)
■寒暖差や湿度差などの環境変化
■栄養バランスの乱れや暴飲暴食
■間違ったスキンケア(ゴシゴシ洗い、保湿不足、合わない化粧品など)
■生活リズムの乱れ(睡眠不足、不規則な生活など)
■花粉などのアレルギー
■マスクや服、髪などの摩擦

このような要因があると、なぜ肌トラブルを起こしてしまうのでしょう?
そのひとつの答えとして、敏感肌の人の多くは上記のような原因により、「肌の水分と油分のバランスが崩れ、バリア機能が弱ってしまって外部刺激に弱くなっている」ということがあげられます。


敏感肌とバリア機能の関係

敏感肌になってしまう原因として、バリア機能が健やかに保たれているかどうかが、大きくかかわります。さらに、その理由を解説していきましょう。

肌を守る「バリア機能」のメカニズム

肌のバリア機能とは、肌が本来持つ力を発揮して、さまざまな刺激や異物、雑菌、紫外線などから身体を守ってくれるとともに、体内から水分が蒸発するのを防ぐ働きのことです。
もう少し詳しく説明しましょう。

上の図のように、皮膚は、表皮、真皮、その下にある皮下組織の3つの層で構成されています。その中の表皮部分も角質層を一番外側にして、いくつかの層に分かれています。バリア機能はこの角質層の中でうるおいが保たれている状態で効力を発揮するのですが、この「うるおい」は、以下の「三大保湿因子」によって守られているのです。

■皮脂膜:肌の表面で、水分が蒸発するのを防ぐ
■天然保湿因子(NMF):角質細胞内で水分を保持する
■角質細胞間脂質(セラミド):角質内の細胞と細胞の間を埋め、水分の蒸発を防ぐ

うるおう肌は、この保湿因子たちがバランスよく働いていてこそ、かなえられるのです。

バリア機能が弱ることで、肌トラブルが引き起こされる

それでは、バリア機能が弱ると、肌の機能はどんな状態になってしまうのでしょう。

上の図のように、角質層のバリア機能が弱ると、肌の内部に蓄えられていた水分が放出されてしまい、肌のうるおいが不足していってしまいます。うるおいがなくなった肌は、外部からの紫外線や花粉、ホコリやウィルスなどの影響を跳ね返せなくなってしまい、敏感に反応することで、さまざまな肌トラブルを引き起こしてしまう、というわけです。

このように、バリア機能を低下させてしまう要因は、なんといっても乾燥です。

外的要因としては、間違ったスキンケアによるダメージなどもあります。
身体の内からの要因としては、精神的ストレスや睡眠不足などの生活の乱れ、偏った食事などもあげられます。

敏感肌を予防するための心がけ

バリア機能を直撃する外部刺激でいえば、紫外線は最大の脅威です。紫外線による炎症などのダメージでバリア機能は損なわれ、肌内部のうるおいを奪い、さらにバリア機能が弱体化してしまうという悪循環におちいってしまうというわけです。こうなってしまうと、刺激に過敏に反応してしまう敏感肌は、いつまでたっても改善されません。

そこで、敏感肌の予防としては、以下の3点を特に重視したスキンケアを心がけてください。

■紫外線対策:秋冬も含め、1年を通じて必要。
■クレンジング、洗顔、保湿アイテムなどを正しく使う:ゴシゴシ洗い、過度にこするなどをしないようにする。
■敏感肌に合った化粧品を選ぶ:低刺激で、かつうるおい成分が充実しているタイプなど。

それでは、具体的にスキンケアのプロセスごとに、具体的なテクニックを確認していきましょう。


敏感肌の保湿スキンケア

毎日のスキンケアを正しく行うことにより、敏感肌の改善が期待できます。「肌に刺激を与えすぎず」「でも、きちんといき渡るように」がポイント。肌タイプに合ったもの、そして保湿力が高いものを選ぶようにしてください。

クレンジング・洗顔

敏感肌の人にとって、肌についた刺激物(花粉、ほこり、汗、化粧品など)をきちんと落とし清潔な表皮を保つことが重要ポイントのため、クレンジングや洗顔は大切なプロセスです。
気をつけて頂きたい点をまとめます。

■こすりすぎは禁物です。泡立てるタイプの洗顔料であれば、たっぷり泡立て、「指ではなく泡のクッションで洗う」ようにソフトな使い方をするのがベスト。泡立てネットなどを使うのもおすすめです。

■クレンジング剤も同じく、なるべく指の刺激を肌が受けないよう、そっと落とすようにしてください。推奨されている使用量を守ること。少なすぎると刺激が大きくなりがちです。

■汚れ落としがないように、おでこのキワ、顎下などもきちんと洗浄すること。汚れが残るとそれが刺激となり、肌が過敏に反応してしまいます。

■あついお湯は、お肌を乾燥させがちです。ぬるま湯か水ですすぐようにしましょう。

■タオルの拭き取りも、こすらないように。そっとスタンプを押すように拭き取るようにしてください。

化粧水・乳液・クリーム

きちんと洗浄した肌に、必要な水分と油分を補給することで、バリア機能を健やかに保ちます。洗顔後はすぐに化粧水、そして乳液やクリームを補給することが大切です。
肌がピリピリしたり違和感を感じない、自分に合って気持ちよい使用感のあるものを選んでくださいね。敏感肌用の化粧品の中でも、できるだけ保湿・保水力のあるタイプを選ぶようにするとよいでしょう。

■化粧水のあとは、必ず乳液かクリーム、またはその両方を使用してください。暑い時期などは化粧水だけですませてしまう方もいますが、それではバリア機能を保つための油分が不足してしまいます。油分は水分を蓋のようにとじこめる皮脂膜の役割をしてくれます。

■推奨されている使用量をきちんと守ってください。敏感肌の人は刺激が怖いあまりに、ついつい使用量を少なめにしてしまう傾向がありますが、量が足りないと十分な効果がみこめないことがあります。
特に乾燥を感じる箇所には、指の腹でそっと重ね付けしてください。

■化粧水や乳液、クリームを使う際も、あまり指で刺激しないようにすること。まず手の平に乗せ、プッシュするように乗せていくとよいでしょう。コットンを使う場合も同じように。
マッサージ等は禁物です。

日やけ止め

解説してきましたように、バリア機能を低下させる紫外線は敏感肌にとって大敵です。紫外線対策は1年中、きちんと行うようにしましょう。朝、洗顔したあとの基本のスキンケアの最後に、日やけ止めを必ずつける習慣にすることをおすすめします。

敏感肌の場合は、つけるときに肌への刺激が少ないよう、なるべくのびが良いタイプを選ぶ方が間違いありません。また、石けんやお湯でも落とせるものを選ぶなど、肌負担の少ないものを選んでください。

昨今、「アンチポリューションコスメ」が話題になっています。
これは大気汚染、具体的には排気ガス、PM2.5、花粉などの有害物質から肌を守る処方をされている化粧品です。
敏感肌の方にとって、有害物質はお肌の大敵ですので、注目してみるといいかもしれないですね。

※日やけ止めについて詳しく知りたい方は、「紫外線から肌を守る」(https://www.kose.co.jp/jp/ja/kirei/uv-care/step2/index.html)もご覧ください。

いかがでしたでしょうか?正しい紫外線ケアや保湿に重点を置いたスキンケアで肌のバリア機能を高めることによって、敏感肌の症状は十分に改善が期待できます。ぜひ実践して、健やかな肌を取り戻してくださいね。

川崎加織先生

皮フ科 かわさきかおりクリニック院長。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。兵庫医科大学・皮膚科医局員からキャリアをスタートし、明和病院勤務、西宮わたなべ前浜クリニック院長などを経て、現クリニックを開院。皮膚科専門医として、女性医師として、母として、患者さんの心と身体に寄り添うことを信条としている。スノボやゴルフもたしなむ活動派。

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