2020.11.11
保湿化粧水の選び方は?お悩みによって選び分けよう
ドクターズコラム
洗顔後や風呂上がりに最初に使用する化粧水。基礎化粧品の中でも、一番なじみのあるアイテムではないでしょうか。 なにげなく使っている化粧水なだけに、その機能や効果的な使い方、選び方などについてあまり深く考えたこともないかもしれません。正しい知識をつけてこそ、化粧水のチカラを最大限にアップすることができるというもの。この機会に、ぜひ学んでみてください。
化粧水の役割とは?
そもそも化粧水って、どんな構造で、お肌にどんな効果をもたらすものなのでしょう。あらためておさらいしてみましょう。
肌の水分を補う
化粧水(ローション)は、主として水分(精製水)と保湿剤が混ざり合った構造になっており、配合比率としては、だいたい水分が80~90%を占めています。なぜなら、化粧水の最大の役割は、肌の水分を補い、潤いを保つということだからです。
クレンジングや洗顔をすませた肌は、汚れとともに水分と油分が取り去られています。洗顔後、何もつけないでいるとお肌のツッパリを感じてしまうのは、水分がどんどん蒸発していってしまう状態になっているということ。特に風呂上がりや温水による洗顔などの後は表皮の温度も上昇しているため、水分が揮発しやすくなる上に、洗顔で皮脂も奪われているために保水ができにくくなってしまう傾向があります。
だからこそ、洗顔後の肌には水分を補給するだけでなく保湿剤で潤いを保つことが大切なのです。
美容液などの成分を導入しやすくする
化粧水で肌、特に角層を潤わせることにより、肌は柔らかくなり、キメが整います。これにより、次につける美容液や乳液などに含まれる美容成分の浸透率が高まることが期待できます。逆に言うと、どんなに有効な成分も、化粧水で潤っていない肌に使うと、効果が引き出せないということです。
化粧水は、あとに使うスキンケアコスメの効果をブースターのように後押ししてくれるアイテムといえるでしょう。
「潤う肌」のメカニズム
化粧水によって届けられた水分や保湿成分は、肌の中でどのように作用するのでしょうか?肌の構造を知ることから確認していきましょう。
そもそも「潤っている」とはどんな状態?
肌は上の図のように、表皮と、その下にある真皮に分かれており、表皮の一番表面にある部分が角層です。一般的に、角層に20~30%の水分が満たされているのが「潤っている」状態と言われています。
化粧水はこの角層に水分を届け、保湿成分により水分量を保つことが目的のスキンケアアイテムというわけです。
肌の内部で働く、保湿の力
角層に十分な水分と油分が保たれていることで、肌のバリア機能が効力を発揮します。バリア機能とは、肌内部の水分を保つだけでなく、紫外線や花粉やホコリ、細菌などの外部刺激から肌を守る役割のこと。このバリア機能を保持するためには、水分を保持する天然保湿因子(NMF)、細胞間脂質(セラミドなど)、皮脂の三大要素が重要な働きをします。
この三大要素は、それぞれどのような機能を持つのでしょうか。その働きを簡単に説明すると、以下のようになります。
■天然保湿因子:角層で水分を抱え込み保持する働きをする
■細胞間脂質:角質細胞の間を満たし、水分の蒸発を防ぐ
■皮脂:肌の表面で水分の蒸発を防ぎ潤いを保つ
このように、角質の内部では水分を保持するためにさまざまな機能が働いています。これらの機能を最大限に発揮するために、化粧水などの保湿ケアで水分をきちんと角質に届けることが大事なのです。
自分に合った保湿化粧水の選び方
数ある化粧水から自分に合った1本を見つけるには、まずは成分などで求める機能をチェックすること、そして使い心地も大切な要素です。
肌状態を観察する
まずは自分の肌タイプ、肌状態をよく観察すること。
肌に軽く触れてみて、部分的にでもかさつきを感じる箇所がある場合は、乾燥肌が疑われます。ファンデーションでヨレができたり、粉っぽく仕上がってしまう場合も、乾燥が原因のケースが多いのです。
また、よく間違えやすいのはニキビです。ニキビが出ると「皮脂が多すぎる」と思い、過剰な洗浄をしがちですが、大人のニキビの場合は、乾燥によって肌のターンオーバーが乱れ、古い角質が毛穴をふさいでしまうことが原因の「乾燥ニキビ」のこともあるのです。
皮脂分泌の多い額や小鼻ではなく、乾燥しやすい頬や口周り、あごなどにできたニキビは、こういった乾燥が原因のニキビであることが多いので、そういう場合は保湿ケアで対応すべきです。このように、大人の肌トラブルの多くは、保湿に重点を置いたケアが必要とされることが多いのです。
「自分の肌って、どんな状態なんだろう?」ということを客観的に知りたくなったら、多くの皮膚科クリニックでは専用の機器などで調べることができます。また、百貨店や化粧品専門店のコスメカウンターなどでも、機器を使った肌診断ができるブランドがあります。機能はブランドによりまちまちですが、肌の水分量や皮脂分泌量、キメやハリ、弾力などまで診断できるケースもありますので、一度、自分の肌質を知るために利用してもよいかもしれません。
自分が求める成分が配合された化粧水を選ぶ
化粧水が水分と保湿成分で構成されていることは前述しましたが、それ以外にも美白が期待できる成分など、ニーズに応じてさまざまな配合がされています。自分の肌タイプ、気になるトラブルなどによって、選ぶようにしましょう。お店で、「高保湿のものは?」「美白力が高いものは?」などと相談してみるのもよいでしょう。
パッケージに記載されている成分欄は、製品の全成分が記載されるきまりになっており、かつ、配合が多い順に記載されています。保湿成分の優先順位などを確認するために、ぜひチェックしてみてください。
しかしながら、成分がどこまで作用するかは人や肌状態によって差があることも事実です。ひどい乾燥を感じる場合などは、皮膚科のクリニックなどを訪ねて医師に相談することをおすすめします。
気に入った感触や香りも大切な要素
このように肌悩みや、それに対応する成分で化粧水を選ぶことが基本ですが、毎日使うものだけに「自分の感覚に合ったつけ心地」を選ぶことも大事な要素ですよね。気に入った香りや感触のコスメを使ったスキンケアタイムは、気分を癒しストレスを解放してくれることにもつながります。もし求める成分が同じであれば、香りや付け心地が好みのものを選んでくださいね。
まとめ
基本的なスキンケアアイテム、化粧水について説明してきました。保湿は肌ケアの基本中の基本なだけに、洗顔後の肌に最初に用いる大切なアイテムが化粧水であることがお分かり頂けたのではないでしょうか。
自分に合った化粧水を選び、ぜひ潤いのある肌をキープしてくださいね。
川崎加織先生
皮フ科 かわさきかおりクリニック院長。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。兵庫医科大学・皮膚科医局員からキャリアをスタートし、明和病院勤務、西宮わたなべ前浜クリニック院長などを経て、現クリニックを開院。皮膚科専門医として、女性医師として、母として、患者さんの心と身体に寄り添うことを信条としている。スノボやゴルフもたしなむ活動派。